IT初心者

【IT初心者向け】ITインフラ構築プロセスとは?(要件定義~運用まで解説)

初心者エンジニア

エンジニアってやり方に手順がなくて、スキルの高い人が経験で案件やっているイメージがあるんだけど、実際はどうなんだろう?

和貴

確かに案件によって多少経験則から実施している部分はあるけど、エンジニアの案件の進め方は決まった手順があるんだよ。今回は一番有名な手順を紹介するよ

ITインフラ構築プロセスとは

ITインフラ構築プロセスとは、ハードウェアおよびソフトウェアの設計、構築、リリースするための手順のことです。

下記のような手順でインフラ環境のリリースが実施されています。

このように各工程を区分けすることにより、下記のメリットが見込まれます。

プロジェクト管理が容易になる

プロセスを明確にすることにより、プロジェクト管理が容易になります
これはプロセス単位で進捗確認を実施するためです。

例えば、今回紹介しているプロセスは基本設計が完了したら詳細設計を実施するというように、プロセスごとにタスクが完了したら、次の工程へ進むという形式をとっています。

そのため、各工程ごとにスケジュールを組むことになり、進捗管理が一目でわかるようになっています。

また、工程の中でも詳細にタスクを洗い出せるため、スケジュール遅延を起こしているタスクが明確になります。
そのため遅延への対策を検討しやすいなど、管理面で多くのメリットがあります。

品質が向上する

プロセス(業務の進め方)にルールを作ることにより、品質の向上に繋がります
これは、各工程においてチェック機能が働くからです。

今回紹介しているプロセスでは、保守や運用を除き、どの工程でも成果物が発生します。

それらの成果物のチェックを各工程ごとに行うことにより、工程ごとにチェックフィルターをかけることが可能です。

逆に工程ごとのチェックを行わないで進めると、例えば詳細設計が誤っていても、次の工程に進めてしまいます。
後の工程で誤りに気づいても、納期に間に合わせるために無理をして、また誤った設計をしてしまうなどのリスクがあります。

そのため、工程を分けるということはしっかりと品質の向上につながっているのです。

各工程解説

初心者エンジニア

工程ごとに分けるメリットはわかったけど、実際この工程って何をしてるんだろう?

和貴

具体的な業務の流れをイメージできるように各工程でやっていることを紹介するね。

要件定義

要件定義は、顧客の要望(やりたいこと)をヒアリングし、案件の概要を決める工程です。
下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・エンジニアへの要望提出
・顧客社内での要望、改善案のまとめ

エンジニア

・顧客への不足情報のヒアリング
・要件に合う構成・機器の選定と想定作業見積もり

成果物

・要件定義書
・見積もり書
・機器構成案

顧客のやりたいこと(要望)を聞いたら、それで要件は固まるのでは?思うかもしれません。
ただ、顧客の要望が本当に提供しているサービスや機器で叶えられるのか、どうすれば顧客の要望を叶えられる機器構成となるのか、といった半分基本設計のような業務も要件定義フェーズでは含まれます

このように、一応区分けはされていますが、それぞれのフェーズを完璧に分離することは難しいのです。

基本設計

基本設計は、要件定義より少し踏み込んで、使用する機能やその期待値を設計していく工程です。機器ごとの作成ではなく、案件全体で使用する機器構成に対する設計書です。

例えば、「ルーティングはWAN側はBGP、LAN側はOSPFを使う」「冗長構成とし、メイン回線を自動的に選択するようにBGPの設定を行う」といった粒度で設計していくのが基本設計になります。

下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・基本設計が要件通りになっているか確認
・エンジニア側からのヒアリングへの回答

エンジニア

・基本設定(参照するNTP,SNMP,syslogサーバの設定など)の洗い出し
・導入する構成に沿った機能ヒアリング
(IPアドレスの払い出しや、Wi-Fiであれば認証方式など)
・上記要望をまとめた、基本設計書の作成

成果物

・基本設計書
・ヒアリングシート

大抵フォーマットがあったりしますので、基本的にはフォーマットに沿って、設計部分のヒアリングと設計書の作成をしていけばOKです。

詳細設計

詳細設計は、基本設計をもとに、実際の機器のパラメータを設計していく工程です。
基本的には機器1台ごとに設計書(パラメータシート)を作成していきます。

下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・エンジニアのヒアリング事項の回答

エンジニア

・基本設計書をもとに、機器ごとの詳細な設計内容の決定
(ルーティングであれば、BGPでメイン回線にweight設定を付与するなど)
・詳細設計書(パラメータシート)の作成
・試験(検証)仕様書の作成

成果物

・詳細設計書
・試験仕様書

構築

構築は、詳細設計書をもとに機器の設定を実施していく工程です。
下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・特になし(構築時のトラブルや設計の修正の連絡を受ける)

エンジニア

・機器の設定の実施
・設定内容が設計書通りにならない場合は、設計書の修正を実施

成果物

・構築時のログ
・構築完了後の機器のconfig

試験

試験は、社内(場合によっては顧客)環境で構築した機器の動作確認を実施していく工程です。
この工程の結果によっては、設計・構築フェーズのやり直しの可能性もあります。

下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・特になし(試験時のトラブルや設計の修正の連絡を受ける)

エンジニア

・詳細設計にて作成した試験仕様書をもとに試験を実施
-試験結果OK→社内構築・試験フェーズ完了
-試験結果NG→原因分析および設定の修正を実施し、再試験

成果物

・試験仕様書(試験結果記載)
・試験時のログ

現地納入

現地納入は、実際に顧客環境に機器を組み込む工程です。
下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・サービス稼働状況の確認
・作業の立ち合い

エンジニア

・新規ケーブルの配線、機器のラッキング
・現地組み込み及び、周辺機器の設定変更の実施

成果物

・作業手順書(実績値記載済み)
・作業ログ
・現地ラック写真(必要であれば)

運用・保守

運用・保守は、機器を組み込んだ後の、動作保証や故障対応を行う工程です。
ひとまとめに運用・保守と言われますが、実態としては運用部隊と保守部隊は分かれていることが多いです。

また、運用は顧客が実施するパターンや、委託会社が運用監視をしているパターンとさまざまです。

保守に関しては基本的に外部にサポートを依頼することが主です。
保守部隊では不明点や動作不良の問い合わせを受け付け、場合によっては機器交換を実施します。

下記は主な対応者と実施内容です。

顧客

・運用・保守部隊へのサービス障害の通知
・運用変更時の、機器の設定追加、変更の依頼
(運用が顧客の場合は、顧客自身で実施)
・保守作業時の立ち合い

エンジニア

運用
・運用時の機器の状態監視
・監視状態のレポートの作成

保守
・顧客問い合わせ対応
・交換機器手配、現地交換作業

成果物

・監視レポート
・問い合わせ結果の回答
・保守交換機器のログ

まとめ

ITインフラ構築プロセスのメリットと、その具体例を紹介しました。

各工程での成果物を意識することにより、その工程でのやるべきことが自ずと定まります。

案件を担当するときには、成果物を意識しながら、そのフェーズで完了すべきことを意識するようにすると、エンジニアとしての案件管理能力が向上するでしょう。

案件に不慣れなうちは、今回紹介したことを意識してみてはいかがでしょうか。